よくある質問−Q&A
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Q&A(お客様からのよくあるご質問と回答)
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Q:溶融亜鉛めっき釜用鋼板について教えて欲しい。
A:溶融亜鉛めっき釜用鋼板は溶融亜鉛めっきの器材として開発された板の事です。釜材などとも呼ばれます。
まず、亜鉛めっき釜に関わりのある元素について以下に記します。
・Si(珪素)が多いほど亜鉛に対する耐食性を害する。
・C(炭素)は亜鉛による激しい浸食が起こる500℃付近のピークを低下させる。
・P(燐)は上記Cの効果を相殺してしまう。
めっき釜用鋼板は亜鉛の浸食を遅らせる為、Siなどの化学成分を低く抑えることで特殊な鋼板となっています。
正しくは脱落速度を遅らせる為の成分除去であり、実際に浸食を遅らせるのは合金層です。
合金層が防御膜の様な役目を果たし、その奥に有る素材が合金になる事を防ぐ形になります。
亜鉛浴温度460〜480℃あたりでは緻密なFe-Zn合金層が発達し、しかも時間と共に合金層が厚くなるため、腐食量も時間と共に低下してゆきます。
しかし500℃では緻密な組織であるζ層が無く、次のδ1pという層は粒状に破壊されているため溶融亜鉛が容易に侵入してしまいます。つまり保護作用が無いので腐食は時間と共に直線的に進行します。
520〜540℃あたりになるとδ1p層の破壊の程度が少なくなるので保護作用がありますが、500℃のピークほどでは無いにしろ温度が高い分、腐食量は高くなります。
以上が浴温による保護作用の変化の特徴ですが、低Si-低p-高Cの鋼は特に500℃における腐食のピークを下げて、500℃においても合金層が破壊されずに保護作用を発揮するといいます。
釜を長持ちさせるには浴温が高くなり過ぎないように管理することが大切です。しかし、操業の関係などで局所的に高温にさらされてしまうという事態から逃れることは非常に難しいといいます。そこまで考えると、低Siにて浸食を抑えるのはもちろんのこと、低Pにてピークを低減させるということも重要なポイントといえます。
当社は基本的に、日本製鉄?製の溶融亜鉛めっき釜用鋼板であるNAGPを採用しています。
以前には統合される前のNKKと川鉄にも有り、日本鋼管(NKK)はNK-ZP、川崎製鉄はAG鋼板と言う名称でした(統合したJFEではJFE-ZPという名称)。
低Si-低Pのキルド鋼であるNAGPは、低Siであること以外は溶接構造用鋼(SM400)なみの鋼材です。
耐食性の点からSi、Pなどを低く抑えているのですが、SiやPは溶接にとっても有害な成分であるため、溶接性を向上させることにも寄与しています。
どの鋼材も成分によって使用方法や施工上の注意点がありますが、NAGPにももちろんあります。当社はメーカーからの注意点を踏まえ、できる限り良い方法にて設計、施工をしております。
溶融亜鉛めっき釜用鋼板は一般鋼材とは異なる成分、尚且つ需要量の少なさによって受注生産という形で製造されているのが現状です。
一般鋼材の様にすぐに手に入れることは出来ませんので、交換サイクルに余裕を持ったり、お早めに製作しておくことをお勧めいたします。
Q:めっき釜の寿命について教えて欲しい。
A:人間の寿命と同様に断定してお答えする事は出来ません。
例えば長さ10mを超える大釜と長さ3m位の小釜では、めっき加工物の種類が「大型鉄骨」と「ボルト、ネジ」の様に大きさと形状が違う為、先ず第一に亜鉛浴の温度が違います。
亜鉛浴の温度はめっきの仕事に合わせて設定するので釜の寿命を優先させる事は出来ません。
しかし、亜鉛浴の温度が高い程、釜の消耗が早く寿命が短い事は事実です。
釜の内壁は亜鉛によって浸食され、年間2〜4?減少する会社もございます。
釜の外壁は、めっきの操業が止まっている間も亜鉛の溶融状態を保持する為、低燃焼ではあっても加熱され続けています。
めっき操業中の加熱炉内温度は700℃以上になり、それにより釜外壁表面は酸化します。
釜の寿命を決めるのは、主に次の通りです。
1:亜鉛浴と加熱炉内の温度
2:釜の寸法と亜鉛の容量
3:1時間当たりのめっき生産量
4:釜の底に溜るドロスを除去する頻度や日頃の点検
釜の寿命を、正確に予知することは不可能です。
過去の釜交換の時に記録したデータが最も信用できて、将来必ず役立つので次の項目を記録する事をお勧め致します。
1:使用期間
2:期間中の仕事量や温度(亜鉛浴温度と炉内温度)
3:期間中の異常高温や失火等のトラブルの有無
4:交換時に、内外面の異常の有無。有る場合はその位置(異常が有った場合写真を残すと役立つ)
5:釜の板厚を計り、毎回比較すると、交換時期を伸ばせるか又は早めないと危険か判断出来ます。
当社には釜を切断解体しなくても残存板厚を測れる超音波板厚測定器を備えております(但し亜鉛を汲み冷えた状態に限る)。
ご要望がございましたら、有償にて測定作業をいたします。
Q:何故消耗品なのかについて教えて欲しい。
A:板厚が、32〜60?と言う厚板で作られている釜なので、何十年でも大丈夫なのではと思われがちですが、実際には長くて7〜8年で交換しています。
短い場合ですと数ヶ月で交換する所もございます。
料理で使う鍋釜とは違い、中で溶けているのは亜鉛です。
亜鉛の溶融温度は420℃以上で、炉内温度は700℃以上の高温に24時間さらされているのが現状です。
また、めっきのメカニズムから釜壁にも粒界浸食が常に発生しています。
めっき釜用鋼板であるNAGP(新日鐵住金製)は、粒界浸食の進行を遅れさせる成分で出来てはいますが、浸食は起こります。
亜鉛溶解温度が高いと浸食スピードが早まります。
よって、湯温の違いで寿命も異なります。
低い温度でも常に炎にさらされている釜壁なので、長期にわたると脆性化が進みます。
溶けている亜鉛の比重は7.14と鉄(7.85)に匹敵するような重さなので、圧力が掛っていて板自体も高温になっている為、釜壁が膨らみ変形します。
内側釜壁に亜鉛との合金層が出来るのですが、何かの原因で合金層が取れると、その部分が急激に浸食が進み、亜鉛漏れ事故になる事もあります。
そうならない様に日頃からの点検、データの蓄積で自社の釜の寿命を把握し、安全な周期で交換していただければと存じます。
Q:亜鉛めっきと塗装の違いについて教えて欲しい。
A:めっきと塗装は、どちらも品物が錆びない様にする為に行う表面処理です。
ドブ漬けめっき等と呼ばれて塗装と変わらないと思われがちですが、異なる点はその接着メカニズムにあります。
塗装の場合、乾いていく過程で、表面に接着し硬化します。
長期にわたると脆性化し、ひび割れなどが発生する可能性が有り、錆が入り込み中から剥れてしまいます。
溶融亜鉛めっきの場合は粒界浸食と言う形で接着します。
金属の表面を顕微鏡などで見ると粒々の集まりであることが判るのですが、その粒々の間すなわち粒界に食い込んで接着する、これが亜鉛めっきなのです。
塗装はハンマー等で叩くと剥れてしまう事がありますが、亜鉛めっきの場合はその程度では剥れません。
何故なら、粒界浸食してくっ付いているからです。
また、表面を補強コーティングでもしたかの様に、品物の強度がUPします。
ただし、塗装は様々な色を選択出来ますが、亜鉛めっきは1色しか有りません。
塩害の多い海の傍等では亜鉛めっきした物にさらに塗装を施して様々な色にするという事があります。
すなわち、この場合は塗装は錆止めではなく装飾として行うという訳です。